恋って、素晴らしいものなのよ

今日もシェリアは口癖のようにそう言った。目を輝かせながら、夢でも語りだしそうな口ぶりで私に何度も同じ事を言うのだ。恋はとても素晴らしいものなのだから、アスベルも男の人を好きになれば良い、そうすれば私の言ってる意味が分かるから。恋がいかに素敵なものか分かるから。悠々と頬を赤く染めながら語るシェリアの顔はどこまでも女の子だった。可愛い可憐な少女。けれど私はシェリアのような女の子にはとてもなれそうにはなかった。好きに種類なんてないのだから。私には理解が出来なかったのだ。幼い私は好きに順位なんて存在しないと信じ込んでいたのだ。


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私に好きを教えた一人目は弟だった。
姉さんが好きだ。そう聞こえるか聞こえないかぐらいの声量でたどたどしく紡がれた言葉を私はとても嬉しく思った。普段憎まれ口ばかりをたたく弟がこんなにも素直になってくれた。それが私にはとても嬉しかったのだ。きっとたくさんの勇気を必要としたに違いない。そんな彼に私も応えよう。私は知らなかったのだ。弟が私のことを姉弟の垣根を超えて好きだという事実を。だから私は弟からの口付けに対して過敏に拒絶してしまったのだ。一番言ってはならない言葉と一緒に 。



姉弟同士で……有り得ない



その時の弟の顔はあまりにも惨めだった。悲痛な面持ちをして、かすれた声でそうですかと呟いた彼は泣きそうだった。弟の泣き顔を見るのはあまりに久しぶりで、でも私は何も言えずに弟が去っていくのを見届けるしかできなかった。胸には罪悪感だけがいつまでも残った。



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二人目は親友だった。
やけに畏まって、突然薔薇を沢山持ってきた彼は私のもとにやってきた。どうしたんだその薔薇。私はいつも彼の行動に驚かされる。けれど彼は私の質問には答えずににこりと微笑んで私の前で膝をおった。王子様がなんてことを!慌てて彼の手を引いた私は逆に彼に手を掴まれてしまった。そっと右手を包まれて、軽く手の上にキス。ゾッとした。彼はこれから恐ろしいことを言うのではないか。しかしその予感はあたってしまった。僕の花嫁になってくれないかい。何故か弟の泣き顔を
思いだした。怖かった。私は彼にから手渡されるはずの薔薇をついにとることは出来なかったのだ。私は、逃げ出した。


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シェリアは言っていた。恋は素晴らしいものだって。女の子は恋をするものなのだって。そんなの嘘だ。一人しかいない実の弟を悲しませ、大事な親友をも私は拒んでしまった。痛い。痛いよ、心が。シェリア、私はどうすればいい。シェリア。シェリア、シェリア!



(お願いだから答えてよ!!)




















私に好きを教えてくれた三人目は幼なじみだった。彼女は病弱で、よく寝込んでいたけれど明るく振舞う可憐な少女だった。弟と自分、それから彼女。3人はいつも一緒に遊んだ。だけれど私には彼女の周りだけがきらきらと輝いて見えた。私は彼女の話す話が好きだった。だれよりも女の子な彼女は無知な私に恋を教えた。私には到底理解できなかったけれど彼女がそこまで素敵だというのなら、私も誰か男の人に恋をして彼女を喜ばしてあげよう!その考えこそが無知だったのだ。私は、もう恋をしていたのに。





(恋に恋する女の子に恋をする)


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